【不動産登記ってなぜ必要?】
松本さんは売主Aさんから土地を購入し、その土地に念願のマイホームを建築する…はずでした。しかし、そうはならなかったのです。
どうしてでしょう。
松本さんはこの土地の所有者になったことを登記していなかったのです。松本さんはいずれ登記をするつもりでしたが、急いで登記をする必要はないだろうと考えていました。
なぜなら、実印を押印した売買契約書も作成したし売買代金も全額支払ったのですから。
3ヶ月後、松本さんは購入した土地にBさんという人が建物を建てて住んでいることを知りました。
驚いた松本さんはBさんに「ここは私が買った土地だ。いったいどうなっているんだ?」と聞くと、Bさんは「私はAさんから土地を買った。Aさんが松本さんにも同じ土地を売っていたことは知らなかった。」と言います。
松本さんは、売買契約書を持って慌てて司法書士に相談に行きました。司法書士は松本さんが買った土地の全部事項証明書(土地登記簿謄本)を確認し、次のように説明しました。
「すでに、現在の登記名義人はBさんとなっています。Aさんは、松本さんに土地を売った1週間後Bさんにも同じ土地を売り、Bさんが自分名義に登記を備えたということのようです。」
松本さんは司法書士に「私の方が先に買ったのに何とかならないのですか?」と尋ねましたが、司法書士の答えは「残念ながら売買の先か後かは問題ではありません。松本さんは、登記名義を先に備えたBさんに対してこれが自分の土地だとは言えないのです。」
購入した土地は自分のものになりませんでしたが、司法書士のアドバイスにより、松本さんはAさんに対し損害賠償の請求を進めているところです。
司法書士からのワンポイントアドバイス!所有権は目に見えません。不動産を肌身離さず持ち歩くことも出来ません。
第三者に「これは自分の不動産だ。」と主張されたとき、「いいえ、私の不動産です。」と反論するには、登記をしておくことが必要です。
これを登記の対抗力といいます。
不動産は高価な財産です。売買のときだけではなく、贈与や離婚による財産分与で不動産を取得したときにも必ず登記をしましょう。
司法書士は登記の専門家として迅速、正確、確実に登記申請を行い、あなたの財産を守るお手伝いをします。
【不動産を相続したらまず登記】
約10年前にお父さんが亡くなった中田太郎さん。お父さんが残した自宅の土地建物について、兄妹3人の間で、長男の中田太郎さんが相続すると言うことで話がまとまったので、安心して登記手続きをせずに放っておいたら、相続人の一人である妹の花子さんが亡くなってしまいました。
中田さん兄妹は話し合いをしただけで、遺産分割協議書を作成していませんでしたので、今から太郎さんの名義に登記をするためには、花子さんの相続人(花子さんの夫と子ども)も一緒になって協議をし直さなければなりません。
しかし、もともと太郎さんは花子さんの家族とは、遠方であまり交流がなかったこともあり、この協議が今になってうまくまとまりません。
そうこうしているうちに、太郎さんの弟さんも亡くなってしまい、弟さんの相続人全員も協議に加えなければならなくなりました・・・。
困った中田太郎さんは、地元の司法書士に相談しに行きました。そこで手続きの進め方を教えてもらい、遺産分割協議書なども作成してもらって、アドバイスを受けながらも、なんとか相続人全員の署名と押印をそろえることができて、無事中田太郎さん自身の名義に登記することができました。
その後、太郎さんは、自分の子ども達に同じような思いをさせないために、司法書士から遺言の作成についてのアドバイスを受け、遺言の作成について真剣に検討しているところです。
司法書士からのワンポイントアドバイス!相続登記について、期限の定めは特にありませんが、あまり長い間放置すると相続関係が複雑になり、手続きに多大な労力を要することもありますので、できるだけ早く手続きされることをおすすめします。
相続人に行方不明の人がいる場合、相続人に未成年者がいる場合、相続人が海外に在住している場合など話し合いがうまくまとまらない場合もあります。そんなときは、お近くの司法書士にご相談ください。
遺言の作成も、相続手続きをスムーズに進めるために有効な手段です。詳しくは、お近くの司法書士にご相談ください。
【夫が亡くなって遺言書が見つかったのですが…】
昨年夫が亡くなった際に、引き出しの中から自筆の遺言書が見つかりました。
私たち夫婦には子供がいません。夫の兄弟ともつきあいがなく、夫の死後、私が相続手続に苦労しないように夫が書き残してくれたのだと思います。
ところが、この遺言書を持って司法書士さんへ相談に伺ったところ、「遺言書の内容が不明瞭なので手続できないかもしれない」「もし、この遺言書が無効だと判断されれば、結局、相続人であるご主人のご兄弟と話し合いをしなければならない」との説明でした。
その後、この司法書士さんにご尽力いただき、遺言書の検認手続や遺言執行手続などをしてもらい、最終的には、なんとか預金の解約や自宅の名義変更もできたのですが、大変時間もかかり、すべてが終わるまで不安な毎日でした。
司法書士さんは、「自分で書く遺言書は、亡くなった後に不備が分かっても訂正しようがないので不安がある」「もし、この遺言書が公正証書であればこのようにいろいろな手続をしなくてもよかったのだが…」 などと説明してくれました。
夫の残してくれた遺言書に心から感謝をしていますが、夫が生前に司法書士さんにアドバイスを受けておけばもっとよかったと思っています。
司法書士からのワンポイントアドバイス!遺言書を残しておいた方がよいと思われるケース
- あなたが亡くなった時に相続人がいない
- 配偶者(夫、妻)はいるが子供がいない
- 相続人以外の方に遺産を渡したい
などの場合には、遺言書を残されることをおすすめします。
遺言書の種類としては、主に、公正証書遺言と自筆証書遺言があります。
公正証書遺言は作成する際に費用がかかりますが、形式不備や内容の不明瞭により遺言が無効となる危険性がないため、公正証書遺言で遺言を作成することをおすすめしていまます。
2019年1月13日より、自筆証書遺言の方式が緩和されたため、自筆証書遺言の利便性が高まる模様です。
従来は、遺言者が遺言の全文を自書しなければなりませんでしたが、財産の特定に必要
な事項(財産目録)については、パソコン等による作成、不動産の登記事項証明書、預貯金通帳をコピーする方法により遺言書を作成することができるようになりました。
しかしながら、なにぶん新しい方式のため、作成後は法律家のチエックを受けられることをおすすめします。
【株式会社をつくりたい!】
パソコンが得意な中村さんは、プログラマーとして会社に勤めていますが、30歳を機に独立して、事業を立ち上げました。
独立当初は、知人の紹介を頼って、仕事を受注していましたが、もう少し、事業の拡大をしたいと考え、事業資金の融資を金融機関に申し込んだところ、法人化を勧められました。
中村さんとしては、会社を作るなんて思っていなかったので、何から進めればよいのか、わかりません。
経理をしている奥さんと自分だけで会社を作ることができるのだろうかと、近くの司法書士事務所に相談に来られました。
司法書士事務所では、中村さんの要望や希望を聞いて、司法書士が、会社の名前(商号)、会社を置く場所(本店の場所)、会社の営業目的、資本金の額、設立時に発行する株式の数や、その発行価格や、会社の機関設計、任期など、様々な説明をしてくれました。中村さんと司法書士は、何度か打ち合わせをして、会社の骨格となる、定款を作成し、公証役場で定款認証を受け、株式会社の設立登記をすることができました。
できあがった中村さんの会社の役員は、中村さんと奥さんだけです。また、株主は、中村さん1人です。資本金については、0円でも株式会社を設立することは可能であるとのことでしたが、信用力という意味では、0円はおすすめできないとのことだったので、資本金は、100万円としました。
その後、中村さんは、銀行から融資を受けることができ、着実に業績を伸ばしています。
中村さんは、会社の法務についてわからないことだらけなので、今後も、会社の運営や法務について、相談したいことがあれば、また、司法書士事務所にお世話になろうと思っています。
司法書士からのワンポイントアドバイス!会社は、設立のときに、しっかりとした機関設計をすることが重要。
また、会社は作るだけでなく、永続的に続いていくものなので、そのメンテナンスが重要となってきます。定期的に又は必要に応じて、専門家へご相談ください。
【高齢者の財産被害を防げ!】
今年80歳になる田中さん。お子さんもなく、夫にも先立たれ、お一人で暮らしています。
2年前から足腰が弱くなり、訪問介護サービスを受けていますが、昨年頃から、物忘れが激しくなるなど、どうも物事を判断する力もだんだんと衰えてきたようです。
最近、知人という男性が、ちょくちょく田中さん宅を訪れていることをヘルパーが知りました。どうやら、田中さんは、その男性にお金を渡しているようなのです。ヘルパーが相談した地域包括支援センターの職員からの連絡で、姪ごさんが職員とともに田中さん宅を訪れて事情を尋ねると、「お金を貸して欲しいと言われたので渡した」と答えるのですが、いつ、いくら渡したのか、田中さん自身もよく覚えていないという状況でした。このままでは、田中さんの全財産がとられてしまう危険があります。
姪ごさんは、センター職員の助言を受けて、司法書士に相談し、成年後見の申立てを家庭裁判所にすることにしました。後日、田中さんの後見人として司法書士が選ばれました。
後見人である司法書士は、田中さんの全財産を調査するとともに、お金を貸したという男性知人とも交渉し、お金を返してもらうことができました。
現在は後見人の支援のもとで、田中さんは日々落ち着いて暮しています。
司法書士からのワンポイントアドバイス!成年後見制度は、判断能力が衰えた高齢者や障がい者の財産や権利を守る制度です。家庭裁判所から選任された後見人が、ご本人の保護者となって支援します。
財産侵害から高齢者等を守るためには、早めの相談がとても大切です。財産侵害や悪質商法被害があると思われる場合は、早期に、司法書士や、地域包括支援センターなどの相談機関にご相談ください。
【借金ローンが払えない…】
会社員のCさんは結婚5年目、妻との2人暮らしです。Cさんの借入は、奨学金、車のローン、買物やガソリン代等でのカード利用代金、結婚前からの消費者金融での借金が複数ありました。さらに預金はほとんどありませんでしたが、妻のパート収入があり、夫婦の収入を合わせて生活と借金ローンの返済は順調にしていました。
今年の春ごろ、妻が妊娠しパートを続けることが難しくなりました。そのため、Cさんの収入だけでは、月々の返済ができなくなり、足りない分を消費者金融で借入れ、カードでの買物を繰り返すようになりました。
そうして、返済のために借り入れを繰り返し、Cさんの借金が月を追うごとに増えていきました。妻の出産を控えたCさんは、将来のこと、子どもが生まれた後の3人での生活のことを考え、借り入れを繰り返す今の生活を不安に思い、司法書士に借金(債務整理)の相談に行きました。
司法書士との相談では、Cさんの月々の給与収入、食費、光熱費などの生活費支出、ローンの返済額の現状を確認し、Cさんの収入の中で家族の将来の生活をしっかり送ることができるように、債務整理の方向を決めていきました。
その後、Cさんは、奨学金の保証人である父親に債務整理のことを説明し、保証人としての支払いをお願いし、車も手放しました。そして、司法書士が破産の申立書類を作成、破産手続きにより債務の支払いを免除してもらいました。
家計収支を立て直し、親子3人の新たな生活をスタートされています。
司法書士からのワンポイントアドバイス!債務整理手続きには任意整理、特定調停、破産、民事再生 等があります。
これらの債務整理をすると、手続き後のある程度の期間、借り入れができなくなったり、新たにクレジットカードが作れなくなったりしますが、
何れも、経済的に将来の生活を立て直すことをサポートする手続きです。
司法書士は、破産や民事再生など裁判所への申立書類を作成します。お近くの専門家にご相談ください。